手軽に入手できる発泡スチロールやスタイロフォームに防音効果があるのか、気になっている方は多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、発泡スチロールは非常に軽量であるため、音を遮る「遮音効果」はほとんど期待できません。
インターネット上では卵パックや発泡ウレタン、プラダンを使ったDIY情報も散見されますが、正しい知識なしに行うとお金をかけずに防音するつもりが、全く効果を感じられない結果に終わることもあります。
特に窓への施工は熱割れのリスクもあり注意が必要です。
この記事では、なぜ発泡スチロールでの対策が失敗しやすいのか、その物理的な理由を解説するとともに、毛布や専用の素材を用いたより確実な代替案について詳しく紹介します。
- 発泡スチロールやスタイロフォームの防音性能の真実
- 卵パックや発泡ウレタンなど身近な素材の効果検証
- プラダンや毛布を使った低コストで実践的な防音アイデア
- 賃貸でも安心な正しい貼り方と原状回復のポイント
発泡スチロールの防音効果は本当?失敗する理由
ホームセンターで安価に手に入り、加工もしやすい発泡スチロールですが、防音材としての実力はどの程度なのでしょうか。ここでは、多くの人が陥りやすい誤解と、物理的な観点から見た「音が止まらない理由」について深掘りします。
- 質量が軽すぎるため、音を跳ね返す「遮音性能」が極めて低い
- 独立気泡構造のため、音を取り込む「吸音性能」も期待できない
- 板自体が振動して特定の音が抜けやすくなる場合がある(条件による)
【結論】スタイロフォームは「遮音」に使えるか?

結論として、スタイロフォームなどの発泡プラスチック系断熱材は、重量が軽すぎるため本格的な「遮音」には不向きであると言えます。
スタイロフォームは断熱材として非常に優秀な素材ですが、防音材として使うには物理的な無理があります。音を遮る力(遮音性能)は、基本的に材料の重さ(面密度)に比例するという「質量則」に従います。
(参照:遮音性能を高める方法|建築音響 知識ページ)
コンクリートや石膏ボードのようにずっしりと重い素材は音をよく遮りますが、空気のように軽い発泡スチロールは、音の圧力に対して簡単に振動してしまい、音をそのまま透過させてしまいます。
また、スタイロフォームは「独立気泡」という構造を持っています。これは小さな空気の部屋がそれぞれ独立して閉じている状態で、空気や湿気を通さないため断熱には最適です。
しかし、音を吸収する(吸音)ためには、グラスウールのように繊維の隙間に音が入り込み、摩擦熱に変換される「連続気泡」や多孔質の構造が必要です。音が入り込めないスタイロフォームは、吸音材としても効果を発揮しにくいのが現実です。
| 素材 | 主な用途 | 密度(重さ) | 遮音性 | 吸音性 |
|---|---|---|---|---|
| スタイロフォーム | 断熱 | 軽い | ✕ | ✕ |
| 石膏ボード | 壁下地・遮音 | 重い | ◎ | △ |
| グラスウール | 断熱・吸音 | 普通 | △ | 〇 |
| ロックウール | 耐火・防音 | 重め | 〇 | ◎ |

どうしてもスタイロフォームを使いたい場合、それは「防音」ではなく「隙間埋め」として活用するのが賢明です。
隙間風を防ぐことで、結果的にわずかな音漏れを防ぐ副次効果は期待できます。
卵パックの防音効果が都市伝説な理由


紙製やプラスチック製の卵パックを壁に貼っても、期待するような防音効果や遮音効果はほとんど得られません。
「音楽スタジオの壁がデコボコしているから、卵パックも同じ効果があるはず」というイメージから広まった手法ですが、これは大きな誤解です。
スタジオの吸音材(ウェッジ形状など)は、計算された密度と素材で音響調整を行っています。一方、卵パックは非常に薄くて軽く、音のエネルギーを受け止めるだけの質量も厚みもありません。
紙製の卵パックであれば、わずかに高音域の反響を抑える(吸音する)可能性はゼロではありませんが、隣室への音漏れや外からの騒音を大きく改善できるほどの遮音効果は期待できません。
見た目が悪くなるうえに、紙は燃えやすいため、壁一面に貼ることは火災のリスクを高めることにもなりかねません。
防音で発泡ウレタンを使う際の注意点


スプレー式などの発泡ウレタンは、気密性を高めるための充填材としては優秀ですが、単体での高い防音効果は期待できません。
発泡ウレタンは、壁のひび割れや配管周りの隙間を埋めることで、空気伝播音(隙間から漏れる音)を防ぐ役割は果たせます。
しかし、素材自体は発泡スチロールと同様に非常に軽量であるため、壁そのものの遮音性能を向上させる効果は限定的です。あくまで「隙間をなくす」ための補助的な材料と捉えるのが正解です。
火気厳禁のリスク
発泡ウレタンや発泡スチロールは石油系の可燃性素材であり、火気や高温環境では燃焼しやすい性質があります。
可燃性のガスを含むスプレー缶タイプを使用する際は換気を徹底し、火気の近くでは絶対に使用しないでください。
また、室内で広範囲に露出させる場合は、建築基準法の内装制限に合わせ、石膏ボード等で覆うなどの防火対策を行うことが望ましいです。
窓に貼るリスク:熱割れと断熱材利用の真実


窓ガラスに発泡スチロールやスタイロフォームを密着させると、条件によっては熱がこもり「熱割れ」を起こすおそれがあります。
特に直射日光が当たる窓ではリスクが高まるため、密着させる施工は推奨されません。
窓は壁に比べて薄く、音の侵入経路になりやすい場所です。そのため、窓枠にはめ込む形の断熱ボードなどが販売されていますが、これを誤って使用すると危険です。
直射日光が当たると、断熱材とガラスの間に熱がこもり、ガラスの温度が急激に上昇します。サッシ周辺の冷たい部分との温度差でガラスが耐えきれず、パリンと割れてしまう現象が「熱割れ」です。
特に、ワイヤーが入っている「網入りガラス」や「複層ガラス」は熱割れが発生しやすい傾向にあります。防音効果が薄いうえに、高額なガラス交換費用が発生しては本末転倒です。
窓の対策を行う場合は、ガラスに直接貼るのではなく、カーテンレールを利用して空気層を設けるなど、ガラス面との距離を保つ工夫が不可欠です。
発泡スチロールより防音効果が高い正しい代替案
効果の薄い素材に時間とコストをかけるよりも、音響工学に基づいた適切な素材を選ぶことが解決への近道です。ここでは、DIYでも扱いやすく、かつ確実な効果が見込める素材と手法を紹介します。
- 防音の基本は「重さ(遮音)」と「フワフワ(吸音)」の組み合わせ
- プラダンを使った二重窓化は、コストパフォーマンスが良いDIY手法
- 緊急時は厚手の毛布や布団が意外なほどの吸音効果を発揮する
発泡スチロールより確実な防音効果のある素材の選び方


確実に防音効果を得るためには、音を跳ね返す「遮音材」と、音を吸収する「吸音材」を適切に組み合わせることが重要です。
発泡スチロールの代わりに選ぶべきは、以下のような素材です。
| 役割 | おすすめ素材 | 特徴・選び方 |
|---|---|---|
| 吸音 (音を弱める) | ロックウールボード ポリエステル吸音材 | ロックウールボードは密度80kg/m³以上を推奨します。 グラスウールよりチクチクせず、扱いやすいロックウールが効果的です。 |
| 遮音 (音を遮る) | 遮音シート 石膏ボード | サンダムCZ-12などの高比重遮音シートや、石膏ボードなどの「重い」素材が基本です。 |
| 防振 (振動を止める) | 防振ゴム 防振マット | 足音や洗濯機の振動には、柔らかさと重さを兼ね備えたゴム素材が必要です。 |
本格的なDIYでは、壁に「遮音シート」を貼り、その上に「吸音ボード」を設置するというサンドイッチ構造を作るのが一般的です。これにより、遮音材で音をブロックしつつ、室内で反射する音を吸音材で抑えるという相乗効果が得られます。
※プロの現場でも使われる不燃・高密度の吸音材です。DIYでの扱いやすさと性能のバランスが優れています。
プラダンの防音効果と安価な自作方法


プラスチックダンボール(プラダン)単体の防音性能は高くありませんが、窓枠に設置して「二重窓(内窓)」を作ることで、空気層による防音・断熱効果が期待できます。
プラダンは中空構造になっているため、発泡スチロールよりは吸音効果が期待できないものの、窓ガラスとの間に新たな「空気の層」を作ることで音の伝わりを軽減します。これは本物の二重サッシと同じ原理を簡易的に再現するものです。
簡易内窓の作成手順
- 必要な材料:
- プラダン(厚さ4mm以上推奨):ホームセンターで購入可
- ガラス戸レール(上下セット):ホームセンターで購入可
- 強力両面テープ(剥がせるタイプ推奨):100均やホームセンター
- カッター、定規
- 作業手順:
- 窓枠の寸法を正確に測ります。
- 窓枠の上下にレールを両面テープで固定します。
- プラダンを窓の高さに合わせてカットします(レールにはまる分を考慮して少し大きめに)。
- レールにプラダンをはめ込み、スムーズに動くか確認します。
- 必要に応じて取っ手などを付けます。
- 難易度: ★★☆☆☆(採寸さえ間違えなければ簡単)



プラダンはポリカーボネート製のものを選ぶと、耐久性と透明度が高く、見た目も損ないにくいのでおすすめです。
紙のダンボールよりも湿気に強く、カビの心配も少なくなります。
毛布の吸音効果とお金をかけずにできる騒音対策


特別な材料を買う予算がない場合、家にある厚手の毛布や布団を活用することで、即席の吸音対策になります。
毛布や布団、衣類などは繊維が絡み合った多孔質の構造をしており、立派な「吸音体」としての性質を持っています。
特にウールや厚手のアクリル毛布は効果的です。例えば、騒音が気になる窓際に厚手のカーテン代わりに毛布を吊るしたり、壁際に布団を干したりするだけでも、室内の反響音が抑えられ、静けさを感じやすくなります。
引っ越し直後の部屋で声が響くのは、家具や布製品がないからです。家具を配置し、ラグを敷き、カーテンを厚手のもの(ドレープが深いもの)にするだけでも、不快な反響音は軽減されます。
これは「お金をかけずに防音」するための基本かつ重要なテクニックです。
失敗しないために知っておきたい発泡スチロールの正しい貼り方と撤去


もし手元にある発泡スチロールや吸音材を壁に貼る場合は、原状回復ができるように下地処理を工夫することが必須です。
賃貸住宅の壁紙に直接強力な両面テープを貼ってしまうと、剥がす際に壁紙ごと破れてしまい退去時に原状回復費を請求されるケースがあります。
(参照:原状回復をめぐるトラブルとガイドラインについて – 住宅|国土交通省)
おすすめの貼り方:マスキングテープ工法
- 壁紙の上に、まず幅広の「マスキングテープ」を貼ります。
- そのマスキングテープの上に「強力両面テープ」を貼ります。
- その上に軽い発泡スチロールや吸音材を貼り付けます。
この方法であれば、撤去時はマスキングテープごと剥がすことができ、壁紙へのダメージを最小限に抑えられます。
ただし、発泡スチロールのような軽量なものであればこの方法で保持できますが、重い遮音シートなどは支えきれないため、突っ張り棒(ラブリコやディアウォール)を使って柱を立てる方法を検討すると安心です。
発泡スチロールの防音に関するよくある質問
- 発泡スチロールを壁一面に貼れば、隣の部屋の話し声は消えますか?
-
残念ながら、話し声を消すほどの効果は期待できません。
話し声は空気だけでなく壁を振動させて伝わるため、軽い発泡スチロールでは振動を止めることができないからです。多少反響が変わる程度と考えたほうが良いでしょう。
- 100均で売っている発泡スチロールブロックなどは防音に使えますか?
-
防音材としては効果が薄いです。
スピーカーの下に置いて振動を抑えるインシュレーター代わりにするアイデアもありますが、素材が軽すぎるため低音の振動は抑えきれません。専用の防振ゴムの使用をおすすめします。
- 防音用に発泡スチロールを使うと火事の時に危ないですか?
-
はい、リスクがあります。
発泡スチロールは非常に燃えやすく可燃性が高く、燃焼時には黒煙や有毒ガスを発生するため、防火上のリスクがあります。壁全面に貼るなどの行為は、火災時の避難を困難にする可能性があるため、安全面から推奨されません。
- スタイロフォームとグラスウール、防音ならどっちが良いですか?
-
防音目的であれば、間違いなく「グラスウール(またはロックウール)」の方が優秀です。
グラスウールは音を吸収する性質がありますが、スタイロフォームは音を吸収せず、遮断する能力も低いためです。
まとめ:発泡スチロールの防音効果を知り賢く対策
発泡スチロールやスタイロフォームは、安価で加工もしやすい便利な素材ですが、「防音」に関しては期待過剰になりがちです。
「断熱材=防音材」というイメージは捨て、音の性質に合った適切な素材を選ぶことが、結果として時間とお金の節約につながります。DIYでの対策は安全性を第一に考え、効果が確実な方法から試していくことをおすすめします。
- 発泡スチロールは軽すぎて音を遮ることができず、防音効果は極めて低い。
- 卵パックや窓への直貼りは効果が薄いだけでなく、火災や熱割れのリスクがある。
- 防音には「重い素材(遮音)」と「多孔質の素材(吸音)」の組み合わせが必須。
- 低コストで対策するなら、プラダン内窓や厚手の毛布の活用が現実的。
- 賃貸でDIYする際は、マスキングテープ等を活用して原状回復に備える。









