「ジョイントマットは防音に意味ない」という口コミを目にして、導入を迷っている方は少なくありません。
特にマンションやアパートといった集合住宅では、子供の足音や生活音が近隣トラブルの原因となり得るため、確実な対策が求められます。
しかし、実際に市販の安価な製品を敷いてみたものの、階下からの苦情が止まらずに頭を抱えるケースは後を絶ちません。
なぜ多くの人が効果を感じられないのか、その背景には音の伝わり方や素材の特性に関する誤解が存在します。
本記事では、ジョイントマットの物理的な限界や失敗しやすい原因を掘り下げつつ、後悔しないための具体的な改善策について解説します。
- 足音などの重量床衝撃音に対してジョイントマットの効果が薄い理由
- マットの厚さよりも重要となる密度や質量の科学的根拠
- ニトリなどの市販品と本格的な防音カーペットにおける性能の違い
- 現状のマットを活用しながら遮音性能を高める具体的な重ね敷き手法
ジョイントマットの防音は意味ない?効果の限界と原因
手軽に購入できるジョイントマットですが、防音対策として導入した結果、期待外れに終わるケースは少なくありません。
ここでは、なぜ一般的なジョイントマットでは音が防げないのか、その構造的・物理的な理由を詳しく解説します。
- 子供の走る音などの重い衝撃音は、軽い素材では物理的に止められない
- 2cm程度の厚みがあっても、密度が低いスポンジ状の素材では振動が透過する
- 話し声などの空気伝播音については、構造上、十分な遮音効果を得るのは難しい
うるさい足音や振動に効果が薄い物理的な理由

結論から言えば、子供がドタバタと走り回るような「重量床衝撃音(LH)」に対して、一般的な軽量ジョイントマット単体での効果は極めて限定的です。
音には、スプーンを落とした時のような「カチャン」という軽くて高い音(軽量床衝撃音)と、子供が飛び跳ねたり大人が踵から歩いたりする時の「ドシン」という重くて低い音(重量床衝撃音)の2種類が存在します。
(参照:一般社団法人 日本フローリング工業会(JAFMA) フローリング・ナビ/防音性能と種類)
EVA樹脂などで作られたジョイントマットは、クッション性によって衝撃を和らげる効果があるため、軽量床衝撃音には一定の効果を発揮します。
しかし、重量床衝撃音は床のコンクリートスラブ自体を揺らすほどの大きなエネルギーを持っており、これを止めるには物理的な「重さ」や「制振性能」が必要です。
空気を多く含んだ軽い素材であるジョイントマットは、この低周波の振動エネルギーを受け止めることができず、そのまま階下へと伝えてしまいます。
そのため、足音対策として導入しても「思ったほど音が小さくならない」「苦情が止まらない」という結果になりがちです。
振動を抑えるための対策としては、柔らかさだけでなく、振動を跳ね返すための硬さや重さが不可欠であることを理解しておく必要があります。
2cmの厚さでも効果なし?防音に不可欠な「密度」の真実

厚みがあればあるほど防音効果が高いと考えられがちですが、実際には「密度」が伴わなければ音を遮断することは困難です。
防音の基本原理の一つに「質量則」というものがあります。これは、壁や床の材料が重ければ重いほど音を遮る能力(遮音性能)が高くなるという法則です。
(参照:遮音性能を高める方法|建築音響 知識ページ(株式会社 NEA))
市販されている極厚タイプのジョイントマットは、確かに厚さは2cmほどありますが、手に取ってみると非常に軽いことがわかります。
これは素材の大部分が発泡した気泡(空気)で構成されているためであり、密度が非常に低い状態です。どれだけ厚みを持たせても、素材自体がスカスカであれば、音の波動は容易にすり抜けてしまいます。
例えば、薄くてもずっしりと重いゴム製のマットや、アスファルト系の遮音シートの方が、分厚いEVAマットよりも遥かに高い遮音性能を示すことがあります。
防音対策においては、単純な厚さよりも「単位面積あたりの質量(面密度)」が重要です。厚さだけに惑わされず、素材の密度や重量を確認することが、失敗しない防音対策の第一歩となります。
遮音等級の低さが招く騒音トラブルと苦情のリスク

安価なジョイントマットの多くは、集合住宅で求められる遮音等級の基準を満たしていないことが多く、これがトラブルの引き金となります。
マンションなどの床材の遮音性能を表す指標として「L等級(L値)」が用いられます。数字が小さいほど性能が高く、一般的にL-45以下であれば遮音性が高いとされ、多くのマンション管理規約で推奨されています。
しかし、実測では、LL-50〜LL-60相当とされるジョイントマットも多く、防音専門品(LL-40クラス)と比べると遮音性能に差がある場合があります。
特に、製品パッケージに「防音」と書かれていても、客観的なL値のデータが記載されていない製品には注意が必要です。
また、L値はあくまで試験室でのデータであり、実際の住環境では建物の構造や施工状況によって性能が変動します。
(参照:一般社団法人 日本フローリング工業会(JAFMA) フローリング・ナビ/L値ってなに?)
ギリギリの性能しかないマットを使用していると、少し子供がはしゃいだだけで許容範囲を超えてしまい、階下の住人にストレスを与えることになります。
一度騒音トラブルに発展すると、相手の感情も過敏になり、より厳しい静寂を求められるようになるため、最初から余裕を持った性能(L-40相当以上)の製品を選ぶことが、長期的な安心につながります。

騒音トラブルにおける最大のリスクは、近隣関係の悪化による精神的なストレスです。
「まずは安価なマットで様子を見る」という方法では、状況によっては十分な改善につながらず、相手に不安を与える可能性もあります。
初期投資はかかりますが、最初から性能の確かな製品を選ぶことが、トータルコストを抑えることにも繋がります。
話し声などの空気音(声)にはほぼ効果がない事実


ジョイントマットは床の衝撃音を和らげるものであり、人の話し声やテレビの音といった「空気伝播音」を防ぐ効果はほとんどありません。
空気伝播音を遮断(遮音)するためには、隙間なく密閉し、重い素材で壁を作ることが基本です。ジョイントマットはその名の通り、パズルのように繋ぎ合わせる構造であるため、無数の隙間が存在します。
音はわずかな隙間からでも漏れ出す性質があるため、この継ぎ目から声や音が容易に通過してしまいます。また、前述の通り質量が軽いため、空気を震わせて伝わる音波を跳ね返す力がありません。
「子供の泣き声がうるさいから床にジョイントマットを敷く」という対策を行う方もいますが、これは目的と手段が一致していません。
声やテレビの音漏れを防ぐのであれば、窓の防音(二重窓や防音カーテン)、ドアの隙間埋め、あるいは壁の遮音対策が必要です。
床にマットを敷くことで部屋の吸音率が若干上がり、室内の響き(反響音)が抑えられることで多少静かに感じることはありますが、隣家や階下への音漏れを直接防ぐ効果は期待できないと認識しておきましょう。
ジョイントマットの防音は意味ないと後悔しない対策
ジョイントマットの限界を理解した上で、それでも防音効果を高めるためには、適切な製品選びと施工方法の工夫が必要です。ここでは、より確実な効果を得るための対策を紹介します。
- L-35などの高規格を取得した防音専門メーカーの製品を選ぶ
- 壁の防音には軽いマットではなく、遮音シートや吸音材の組み合わせが必要
- 異なる素材を重ねる「サンドイッチ工法」で振動を減衰させる
ニトリ等の人気製品と防音特級(L-35)の決定的な違い


防音性能を重視する場合、インテリアショップの汎用品と防音専門店の製品には、構造と素材において決定的な性能差が存在します。
ニトリやホームセンターで販売されている一般的なジョイントマットは、主に床の保護やクッション性を目的としており、素材は単一のEVA樹脂などが中心です。
これに対し、MUTEの「防音専科」やピアリビングの「静床ライト」といった防音特級とされるLL-40クラス(ΔLL-4)相当の製品は、高密度のバッキング層(裏材)とパイル層を組み合わせた多層構造になっています。
このバッキング層にアスファルト系や特殊樹脂などの比重の高い素材を使用することで、振動を強力に抑制します。
以下の表は、一般的なジョイントマットと高性能防音タイルカーペットの比較です。
| 比較項目 | 一般的なジョイントマット | 高性能防音カーペット (Tier 1) |
|---|---|---|
| 価格帯(6畳) | 5,000円 〜 15,000円 | 50,000円 〜 80,000円 |
| 主な素材 | EVA樹脂、PE(低密度) | パイル + 高密度バッキング材 |
| 遮音等級目安 | LL-50〜LL-60相当 (聞こえる〜うるさい) | 防音特級とされるLL-40(ΔLL-4)クラス (静音レベル) |
| 重量床衝撃音(LH) | △ 効果薄(振動が伝わる) | ◎ 効果あり(質量で抑える) |
| 設置の手間 | 楽(カットも容易) | 重いため運搬・施工に労力が必要 |
| おすすめ用途 | 傷防止、転倒対策 | 足音対策、ピアノ、楽器 |
価格差は大きいですが、騒音トラブルを未然に防ぐための「保険」と考えれば、Tier 1製品への投資はコストパフォーマンスが高いと言えます。
ジョイントマットを壁に貼っても声は防げない理由


隣の部屋からの話し声やテレビの音を防ぐために、余ったジョイントマットを壁に貼り付けるDIYを見かけることがありますが、これは防音対策としてほとんど意味を成しません。
壁の防音において最も重要なのは「遮音」です。音を遮るためには、コンクリートや石膏ボードのような「重くて硬い素材」で壁を厚くするか、専用の遮音シートを使用する必要があります。
ジョイントマットのような軽くて気泡を含んだ素材は、音を透過させてしまうため、壁に貼っても隣室への音漏れを防ぐバリアにはなり得ません。
また、室内の反響を抑える「吸音」の効果も、専用のグラスウールやフェルトボードに比べれば微々たるものです。
壁の防音をDIYで行う場合は、まず比重の高い「遮音シート」を壁に隙間なく貼り付け、その上から「吸音ボード」を設置するという二重構造にするのが鉄則です。
軽いマットを貼るだけでは、労力に見合った効果は得られないため避けた方が無難です。
壁の防音対策については、遮音シートの施工が不可欠です。質量のある素材で振動を止めることを意識しましょう。
遮音効果を高める「足音マット」との重ね敷き活用法


今あるジョイントマットを無駄にせず、防音性能を飛躍的に向上させる方法としておすすめなのが、異なる素材を組み合わせる「重ね敷き(サンドイッチ工法)」です。
音や振動は、異なる密度の物質を通過するたびに減衰する性質があります。この特性を利用し、以下の3層構造を作ることが理想的な対策となります。
- 最下層(防振・制振): 床への振動伝達を断つための高密度なマット。 (例:ピアリビング「足音マット」、ゴム製マットなど)
- 中間層(衝撃吸収): 衝撃のピークを和らげる厚手でクッション性のある素材。 (例:手持ちのジョイントマット)
- 最上層(質量付加・飛散防止): 全体を抑え込み、隙間を塞ぐためのラグやカーペット。 (例:静床ライト、厚手のラグ)
特に重要なのが最下層です。ここに専用の「足音マット」のような防振材を敷くことで、ジョイントマットだけでは防ぎきれなかった振動を床に伝わる前にカットします。
単体では効果の薄いジョイントマットも、この中間層としての役割(クッション材)であれば十分に機能します。
振動を絶縁し、ジョイントマットの効果を底上げするためのベース材として最適です。
失敗しないために知っておきたい正しい製品の選び方


最終的にどのような製品を選ぶべきか、判断の基準は「何を防ぎたいか」によって明確に分かれます。
まず、目的が「子供の転倒防止」や「床の傷防止」、あるいは「スプーンなどの落下音(高音)」だけであれば、安価なEVA製ジョイントマット(厚さ1cm〜2cm)でも十分な役割を果たします。
コストを抑えつつ、日常の些細なストレスを軽減できるでしょう。
一方で、目的が「子供の走り回る足音」や「ジャンプする音」といった重量床衝撃音対策であれば、迷わず「防音カーペット(タイルカーペット)」や「防振マットとの併用」をお勧めします。
パッケージに「L-45」や「L-35」といった遮音等級が明記されているかを確認し、可能な限り数値の小さいものを選んでください。
また、素材の表記に「アスファルト系」「樹脂バッキング」「高密度フェルト」などの記載があるかどうかも、性能を見極めるポイントになります。
ジョイントマットの防音に関するよくある質問
- ジョイントマットの下にカビが生えると聞いたのですが対策はありますか?
-
はい、敷きっぱなしにすると結露や湿気でカビが発生するリスクが高いです。月に1〜2回はマットを剥がして換気を行い、床とマットの裏面を乾燥させることが重要です。特に冬場の結露や、夏場の湿気には注意が必要です。
- 賃貸住宅で使用する際の注意点は何ですか?
-
長期間敷いたままにすると、マットの成分や可塑剤がフローリングに移り、床が変色したりベタついたりする「化学移染」が起きる可能性があります。
これは原状回復費用の対象となるため、床とマットの間に「防ダニ・防カビシート(不織布)」や「養生シート」を挟むのが最も有効です。これにより通気性が確保され、床への色移りも物理的にブロックできます。
- 効果的な敷き方はありますか?
-
部屋の一部だけに敷くよりも、壁から壁まで隙間なく敷き詰める(Wall-to-Wall)方が、音の回り込みを防げるため効果的です。
ただし、湿気の逃げ場がなくなるためカビのリスクは上がります。バランスを考え、子供が遊ぶエリアを中心に広めに敷き、その上からラグなどで覆うのが現実的な運用です。
まとめ:ジョイントマットの防音は意味ないと知る
本記事では、ジョイントマットの防音効果が限定的である理由と、より確実な対策について解説してきました。安価で手軽なジョイントマットは便利ですが、「音を消す」という観点においては万能ではありません。
特に子供の足音のような振動を伴う騒音に対しては、物理的な質量と密度が不足していることを理解しておく必要があります。
騒音トラブルは一度発生すると解決が難しく、日々の生活に大きなストレスをもたらします。「意味がなかった」と後悔しないためにも、目的に合わせた正しい素材選びと、必要に応じた重ね敷きなどの工夫を取り入れてみてください。
- 軽いジョイントマットは「足音(重量衝撃音)」には効果が薄い。
- 防音には「厚さ」よりも「密度(重さ)」が重要である。
- 話し声などの空気音を防ぐには、マットではなく隙間埋めや遮音が必要。
- 確実な効果を得るなら、Tier 1クラスの防音カーペットや防振マットを検討する。
- 賃貸ではカビや色移り対策を行い、退去時のリスクを減らす。










