防音室を自作しようと考える際、多くの方がまず費用の安さに魅力を感じます。市販の防音室は高額であるため、DIYで壁を補強したり、グラスウールや石膏ボードを使って部屋を防音室にしたいと考えるのは自然な流れです。
しかし、「防音室 自作 失敗」という口コミ・体験談も多く見られるように、安易な自作には無視できないリスクが潜んでいます。高い防音効果(Dr-60/Dr-80)を目指して材料を揃えても、実際の効果が伴わなければ時間と労力の無駄になってしまいます。
特に賃貸物件の場合、重量や原状回復の問題も無視できません。防音室の自作にはどのようなリスクがあり、失敗しないためにはどうすれば良いのか、事前に正しい情報を得ておくことが重要です。
- 防音室の自作において期待した防音効果が得られない物理的な理由
- 賃貸物件で防音対策を行う際に発生する重量や規約上の重大なリスク
- 費用対効果を踏まえた現実的な自作の手順と失敗しないための代替案
防音室の自作が失敗に終わる原因とリスク
コストを抑えるためにDIYで防音室を作ろうとしても、多くのケースで期待通りの結果が得られないのが実情です。ここでは、なぜ自作防音室が失敗しやすいのか、その構造的な原因や物理的な限界、さらには生活環境に関わるリスクについて解説します。
- 吸音材だけでは音を遮ることはできず、音が筒抜けになるケースが多い
- 隙間の処理や重量の確保が難しく、プロ並みの遮音性能は再現できない
- 賃貸では床の耐荷重や原状回復義務が大きな障壁となる
グラスウール等の吸音材だけでは防音効果なし

吸音材だけでは音漏れは1〜2割しか減りません。「吸音材で防音できる」というのは「吸音材」と「防音材」が混同されてよく起こる誤解です。
防音対策を考えた際、最初に思い浮かべる素材としてグラスウールやウレタンスポンジなどの吸音材が挙げられます。ホームセンターや通販でも手軽に入手できるため、これらを壁に貼り付ければ音が外に漏れなくなると考えがちです。しかし、吸音材単体では音を遮断する効果はほとんど期待できません。
防音には「吸音」と「遮音」という明確な役割の違いがあります。吸音材は、音の反射を抑えて室内の響きを調整するための素材であり、音そのものを跳ね返して外に出さないようにする力は弱いです。(参照:【特集】音を知る – DAIKEN)
音は空気中を伝わる波であり、吸音材のような多孔質の軽い素材は、音のエネルギーを熱に変えて減衰させることはできても、透過しようとする音を止めることはできません。
実際に、吸音材を壁一面に貼ったとしても、隣の部屋への音漏れや外からの騒音が劇的に減ることは稀です。防音効果を得るためには、重い素材で音を跳ね返す「遮音」と、隙間をなくす「気密性」が不可欠です。吸音材はあくまで補助的な役割であり、吸音材だけで防音室を作ろうとすることが、自作における典型的な失敗の第一歩となります。

吸音材は「部屋の中で音が響きすぎるのを防ぐ」ためには非常に有効です。
録音環境を整える際などには必須ですが、「外への音漏れを防ぐ」目的で使用する場合は、必ず遮音材とセットで考える必要があります。
石膏ボードや壁の補強でも自作防音室は限界


石膏ボードを重ねても、隙間・振動・構造が原因でプロレベルの防音は不可能です。
遮音性を高めるために用いられる代表的な素材が石膏ボードです。建築資材として一般的で、重量があるため遮音効果が見込めます。しかし、DIYレベルで石膏ボードを重ね張りしたり、壁を補強したりしても、本格的な防音室としての性能には限界があります。
その最大の理由は「質量則」と「隙間」の問題です。質量則とは、壁が重ければ重いほど音を遮る能力が高まるという物理法則ですが、高い防音効果を得るためには、床や建物の構造が耐えられないほどの重量が必要になることがあります。
また、音は水と同じように、わずかな隙間からでも漏れ出します。扉の蝶番、換気口、ケーブルを通す穴、壁と床の接合部など、自作では完全に塞ぐことが難しい微細な隙間から、音は容赦なく漏れていきます。
さらに、プロの施工では、壁の振動が柱や床に伝わらないようにする「浮き構造(防振構造)」が採用されますが、これをDIYで再現するのは技術的に極めて困難です。壁を厚くしても、振動が建物の構造体を伝わって隣室に響いてしまう「固体伝播音」を防ぐことは難しく、結果として「苦労して作ったのに音が漏れる」という失敗につながります。
Dr-60やDr-80の高い遮音性は自作で困難


自作で到達できるのはDr-20〜30程度。Dr-60以上は専門的な構造が必須です。
防音性能を示す指標として「Dr等級」があります。
多くの人が防音室に求めるのは、楽器演奏や大声での配信が可能なDr-60以上の性能ですが、これを自作で実現するのは現実的ではありません。
- Dr-30:普通の会話は聞こえる。多少マシになる程度。
- Dr-40:会話は小さく聞こえる。生活音はまだ分かる。
- Dr-50:大きな声はかすかに聞こえる。歌声はほぼアウト。
- Dr-60:日常会話はほぼ聞こえない。楽器は「気配」程度。自作での実現は困難
- Dr-80:ドラム・ピアノなど大音量も“かすかに分かる”レベル。
Dr-60以上の性能を確保するには、単に壁を厚くするだけでなく、多層構造による複合的な遮音、完璧な気密処理、そして高度な防振対策が必要です。
特にドラムやベースのような低音域や振動を伴う音は、軽い素材や簡易的な構造では防ぎきれません。低音はエネルギーが強く、壁を透過しやすいため、コンクリートや鉛シートなどの非常に重い素材と、専門的な設計が必要になります。
DIYで達成できるのは、一般的に最大Dr-20〜30程度(生活音を少し軽減する程度)と考えるのが現実的です。「楽器を練習したい」「夜中に大声を出したい」といった目的で自作防音室を作ることは、労力に見合わない結果に終わる可能性が極めて高いと言えます。
賃貸で「自作で部屋を防音室にしたい」はほぼ不可能


賃貸は床荷重・原状回復・騒音トラブルの3つの要因でDIY防音はほぼ成立しません。
【賃貸で自作がNGな理由まとめ】
- 石膏ボードや遮音材は非常に重く、床の耐荷重を超えやすい
- 壁や天井を固定するビス穴は原状回復で高額請求の原因に
- 遮音には「隙間ゼロ」が必要だが、賃貸では施工制限が大きい
- 隣室・上下階への固体伝播音が防げず、騒音トラブルに発展しやすい
- DIY防音は撤去が非常に困難で、産廃費用が高額化しやすい
賃貸マンションやアパートにおいて、部屋を防音室に改造しようとする試みには、構造上および契約上の大きなリスクが伴います。まず問題となるのが「床の耐荷重」です。
一般的な住宅の床の積載荷重は、建築基準法で1平方メートルあたり約180kgと定められています。
(参照:建築基準法施行令 | e-Gov法令検索 デジタル庁運営の公式行政情報ポータル)
本格的な防音を目指して石膏ボードや遮音シートを多重に貼ると、1畳程度の狭いスペースに数百キロの重量が集中することになり、床が沈んだり、最悪の場合は構造体にダメージを与えたりする恐れがあります。
また、賃貸契約における「原状回復義務」も大きなハードルです。壁にビスを打つ、強力な接着剤を使うといった施工は、退去時に高額な修繕費を請求される原因となります。突っ張り棒(2×4材とディアウォール等)を使った工法もありますが、重量のある防音壁を支えるには強度が不安であり、転倒事故のリスクも否定できません。
賃貸物件での施工に関しては、必ず事前に管理会社や大家への確認を行ってください。無許可での造作は契約違反となり、退去勧告を受ける可能性があります。また、床の補強工事ができない以上、重量のある自作防音室の設置は避けるべきです。
酸欠や火災のリスクを確認 |自作防音室の安全対策


DIYで完全密閉を作る作業には酸欠や熱中症、火災のリスクが伴います。
防音性能を追求して気密性を高めるほど、室内の空気環境は悪化します。自作防音室において最も見落とされがちで、かつ生命に関わる危険な失敗が「換気不足」による事故です。
人間が呼吸をすると酸素が消費され、二酸化炭素濃度が上昇します。狭く密閉された自作ブース内では、短時間で二酸化炭素濃度が危険域に達し、頭痛、めまい、眠気、そして最悪の場合は意識障害や酸欠を引き起こすリスクがあります。しかし、換気扇をつければそこから音が漏れるため、多くの自作者が換気口を塞いでしまうという誤った判断をしてしまいます。
また、狭い空間内でPCやモニターなどの電子機器を使用したり、照明を点灯したりすると、熱がこもって室温が急上昇し、熱中症になる危険性もあります。可燃性の吸音材(ウレタンスポンジ等)を使用している場合、電気配線のショートなどが原因で火災が発生すると、密閉空間であるがゆえに発見が遅れ、一気に燃え広がる恐れもあります。
注意:密閉空間での換気不足は命に関わります
適切な換気システム(防音ダクト等)を自作できない場合、完全密閉型の防音室を作ることは危険です。また、断熱材や吸音材には難燃性の素材を使用するなど、火災リスクへの対策も必須です。
防音室の自作で失敗しないための対策と代替案
自作のリスクを理解した上で、それでもDIYに挑戦したい場合や、失敗を避けるための現実的な選択肢を知りたい場合に役立つ情報をまとめます。正しい手順と材料選び、そして既製品との冷静な比較が、後悔しないための鍵となります。
- 自作する場合は遮音と吸音を組み合わせた多層構造にする
- 換気システムと重量対策は必須項目として計画する
- コストと手間を考慮すると、簡易防音室の購入が合理的な場合が多い
自作手順と材料 | 防音効果のある素材(吸音材・遮音材・制振材)の使い分け


どうしても自作を行う場合、防音の原理に基づいた適切な材料選びと施工手順が必要です。ここでは、DIYで一般的に行われる手順と、それぞれの工程で必要な材料、および注意点について解説します。
必要な材料と入手先
- 遮音材(石膏ボード、遮音シート):音を跳ね返す重い素材。ホームセンターや建材通販で購入可能。
- 吸音材(グラスウール、ロックウール、ウレタンスポンジ):音の響きを抑える素材。通販での購入が一般的。
- 制振材(制振ゴム、制振テープ):振動を抑える素材。通販や専門店で入手。
- 骨組み(2×4材、角材):構造を作るための木材。ホームセンターで購入。
- コーキング剤(シリコンシーラント):隙間を埋めるための充填剤。ホームセンターで購入。
防音室自作の基本手順
- 設計と計画(★☆☆☆☆)
設置場所のサイズ、重量制限、換気経路を綿密に計画します。 - 床の防振対策(★★☆☆☆)
床に防振マット(P防振マット等)を敷き、その上に合板を重ねて「浮き床」のような層を作ります。振動が階下に伝わるのを防ぐ重要工程です。 - 骨組みの作成(★★★☆☆)
木材で枠組みを作ります。歪みが出ないよう、水平・垂直を正確に取ることが求められます。 - 遮音材の施工(★★★★☆)
骨組みの外側に石膏ボードを貼り、その上に遮音シート、さらに石膏ボードを重ねる「サンドイッチ構造」にすると効果的です。隙間はコーキング剤で徹底的に埋めます。 - 吸音材の施工(★★☆☆☆)
室内の壁面に吸音材を設置します。これにより、室内の反響音を抑え、クリアな音環境を作ります。 - 換気扇の設置(★★★★★)
音漏れを防ぐための「防音ダクト(迷路のような空気の通り道)」を自作し、換気扇を取り付けます。最も難易度が高い工程です。
自作防音室は、材料の運搬や切断、組み立てに多大な労力を要します。また、換気システムの設計ミスは酸欠リスクに直結するため、自信がない場合は完全密閉を目指さず、簡易的な吸音ブースに留めることを推奨します。
費用と労力で比較!自作と既製品はどっち?


「自作なら数万円でできる」というのは、最低限の材料費だけを見た場合の試算であることが多いです。実際には、工具代、失敗した際の修正費用、端材の廃棄費用などがかさみます。また、製作にかかる時間や労力もコストとして考える必要があります。自作と既製品(簡易防音室)を比較してみましょう。
| 項目 | 自作(DIY) | 既製品(簡易防音室) | 本格防音室(ユニット) |
|---|---|---|---|
| 費用目安 | 5万〜15万円 | 10万〜30万円 | 50万〜150万円以上 |
| 防音性能 | △ (作り手による・低い) | ◯ (一定の効果あり) | ◎ (性能保証あり) |
| 設置の手間 | × (設計・調達・施工に数日〜数週間) | ◯ (組立のみ・数時間) | ◯ (業者施工または組立) |
| 安全性 | △ (換気・強度に不安あり) | ◯ (設計段階で考慮済み) | ◎ (高い安全性) |
| 処分・移設 | × (解体が困難・廃棄費高額) | ◯ (分解・再組立が可能) | ◯ (移設サービスあり・売却可) |
| おすすめ用途 | DIY自体を楽しみたい人 | 手軽に歌や配信をしたい人 | 本格的な楽器練習・録音 |
自作の場合、材料費だけでなく、完成後の廃棄処分にも手間と費用(産業廃棄物処理など)がかかる点がデメリットです。一方、既製品の簡易防音室は、購入費用は自作より高くなる傾向がありますが、組立が簡単で、不要になった際に中古として売却できる可能性もあります。
トータルのコストパフォーマンスとリスク回避を考えると、多くの人にとって既製品の方が合理的な選択肢と言えます。
失敗を避けるなら「だんぼっち」等の簡易防音室


自作の失敗リスク(性能不足、労力、安全性)を回避しつつ、比較的低コストで防音スペースを確保したい場合、「だんぼっち」をはじめとする段ボール製や軽量素材の簡易防音室が有効な解決策となります。
これらの製品は、本格的な防音室ほどの遮音性能(Dr-60など)はありませんが、人の話し声や歌声を「隣の部屋に聞こえにくいレベル」まで減衰させる効果は十分にあります。
何より、換気口があらかじめ設計されており、酸欠のリスクが低い点や、軽量で床への負担が少ない点は、賃貸住まいの方にとって大きなメリットです。
「だんぼっち」は、ユーザー自身が遮音シートや吸音材を追加してカスタマイズすることを前提としたベースとしても優秀です。ゼロから骨組みを作るよりも簡単で、失敗が少ない方法と言えます。
※防音室自作の「骨組みを作る手間」を省き、カスタマイズのベースとしても最適。手軽に自分だけの防音空間を手に入れたい方におすすめです。
また、もう少し予算を出せる場合は、工具不要で組み立てられる「OTODASU」などの製品も選択肢に入ります。これらは見た目もスマートで、リビングなどに置いても違和感が少ないデザインになっています。
※軽量で組み立ても簡単。賃貸でも導入しやすい、スタイリッシュな簡易防音室です。
防音室の自作に関するよくある質問
- 自作防音室ではどれくらいの防音性能(Dr値)が出せますか?
-
多くの場合、到達できるのはDr-20〜30程度です。
これは「生活音がやや減る」レベルで、歌声・楽器・配信音はほぼ漏れます。Dr-50〜60以上を目指すには、浮き床・二重壁・多層構造・厳密な気密施工が必要で、自作では技術的にも重量的にも到達できません。
- 卵パックやダンボールを壁に貼れば防音効果はありますか?
-
ほとんど効果はありません。
卵パックやダンボールは非常に軽く、音を遮る「遮音効果」がほぼゼロです。卵パックの形状によるわずかな音の拡散効果は期待できますが、防音対策としては労力に見合わない結果になるでしょう。
- スタイロフォーム(断熱材)は防音材として使えますか?
-
単体の防音材としては不向きです。
スタイロフォームなどの発泡プラスチック系断熱材は非常に軽量であるため、音を透過させてしまいます。断熱効果によって室内の温度が上がりやすくなるデメリットの方が大きくなる可能性があります。
- クローゼットを防音室に改造することはできますか?
-
可能ですが、注意が必要です。
クローゼットは元々密閉性が低く、壁も薄いことが多いため、遮音シートなどで補強する必要があります。また、電源の確保や換気扇の設置が難しく、熱中症や酸欠のリスクが高まるため、長時間の使用には適していません。
- 自作した防音室を処分する時はどうすれば良いですか?
-
解体して分別し、自治体のルールに従って処分する必要があります。
石膏ボードやグラスウールなどは「適正処理困難物」として通常の粗大ゴミでは回収してもらえない地域が多く、その場合は専門の産業廃棄物処理業者に依頼する必要があり、数万円の費用がかかることがあります。
まとめ:防音室の自作で失敗しないための選択
防音室の自作は、コストを抑えられる可能性がある一方で、性能不足、安全性、廃棄の手間といった多くのリスクを伴います。「思ったような効果が出なかった」「部屋が暑くて使えない」といった失敗を避けるためには、自作の限界を正しく理解し、目的に合った手段を選ぶことが大切です
特に賃貸物件や、楽器演奏のような高い遮音性が求められるケースでは、自作よりも既製品の導入や、部分的な防音対策(窓やドアの隙間埋めなど)から始めることを検討してみてください。
- 吸音材だけでは音は止まらないため、重い遮音材との組み合わせが必須
- DIYでの完全密閉は難しく、換気不足による酸欠や熱中症リスクが高い
- 賃貸では床の耐荷重や原状回復トラブルに注意する
- 自作にかかる労力や廃棄コストを考えると、既製品の方がコスパが良い場合がある
- 失敗を避けるなら「だんぼっち」などの簡易防音室をベースにするのがオススメ









